Silent Flower Cracks Concrete

読書感想文など

相手を解体し再構築するインタビュー

本著をテキストとして、いくつか心に留まったことを書き起こしていきたい。まずはインタビューについて。

みみずくは黄昏に飛びたつ

みみずくは黄昏に飛びたつ

 

本著は川上未映子村上春樹をインタビューしたインタビュー集であり、基本的に川上未映子の質問に対する村上春樹の回答が記載されている。この川上未映子のインタビューの質問の質が圧倒的に高く、結果として深みに富み、新しい視座を以て村上春樹像を照らし出す理想的なインタビューとなっている。

インタビューはとても難易度の高い仕事だと思う。テープレコーダーのように相手の喋るがままに聞き役に徹するのではなく、指揮者のように恣意的に相手を誘導するのでもなく、あくまで中立的なスタンスでありながら「問い」に対する答えを得なければならない。

あくまで個人的な話だが、仕事で多くのクライアントインタビューに携わった20代、縦糸と横糸を通して相手を編み込む、そんなイメージでインタビューに臨んでいた。

縦糸はある種のテーマに沿った回答を相手から引き出していくこと。横糸は相手の中に、もしくは相手と他者にある共通項を括りだすことで、相手が自分自身ですら気づいていない法則や価値観を浮かび上がらせることをイメージしている。

縦糸が手繰れればインタビューとしては成功と言えるが、一つでも確かな横糸が通せれば、そのインタビューは相手にとって新しい視点を得られた記憶に残る経験となる。

縦糸を以て相手を解体し横糸で再構築する。個人的にはそれがインタビューの理想形であり、川上未映子のインタビューはその理想を体現している。村上春樹ファンである故の読みの深さを差し引いても、インタビューに向かうシリアスさと集中力、そして仮説の精度が尋常ではない。

彼女の人間としての力の根底にある底力に触れるインタビューだった。際立った才能を持ち、かつ凄まじい訓練を積み上げてきたオリンピック選手のプレーを見たようなフィジカルな感動を覚えた。